大江戸ロミオ&ジュリエット
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「……わたくしが隣の座敷で、耳をそばだてて聞き及んだことじゃ」

寿々乃が茶を一口含んだ。
この座敷に入った際におせい(・・・)が給仕した茶は、もうすっかり冷めていた。

「梅ノ香へは、うちの母上が話をつけに行ったのじゃ。
……なにを話してきたのかは知らぬが、帰ってきたときの母上の顔は、まさに夜叉でござった」

あれからずいぶん経ったというのに、志鶴の顔を見るなり梅ノ香を思い起こすあたり、富士にしても忘れられぬ、辛く腹立たしいことであったのであろう。

「……義姉上(あねうえ)さま、お話づらいことを教えてくださり、誠にありがとうござりまする」

志鶴は深々と頭を下げた。
そして、頭を上げたとき、ある決意を固めた。


……胸の奥がずっと、ふつふつ、していた。

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