大江戸ロミオ&ジュリエット

「そうかい、びっくりさせんじゃねぇよ。そういうこったら、しばらく実家(さと)()ぇって、親孝行しな。娘が(そば)にいたら、おっ()さんも心(づえ)ぇわな」

懐手(ふところで)をした源兵衛が、うんうん、と肯いた。

「あ…あの……舅上(ちちうえ)様……わたくしは……」

正そうとする志鶴を、多聞が遮った。

「志鶴、実家に帰ぇりてぇんなら、その前に一つ、聞いてもらいてぇことがある」

多聞は志鶴をじっと見つめて告げた。

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