大江戸ロミオ&ジュリエット
゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚


髪結いが寝所に来た。
朝、髪を整えさせるのは与力の日課だ。

多聞は箱枕に頭を乗せ、目を閉じる。
あとは髪結いに任せた。

やがて、武家らしく左右の(びん)を膨らませずに、すっきりと高く結い上げて細い(まげ)を前に垂らした、いつもの本多髷が仕上がった。

「……若旦那、お待たせしやした」

髪結いがそう云ったあと、手際よく道具を片付けていく。縁側で控えていた女中のおせい(・・・)が、待ってましたとばかりに茶の支度を始めた。

「……あっ、いけねぇ」

うっかり茶筒に茶っ葉を補うのを忘れていたのだ。

「若旦那さま……ちょっくら、すんません」

おせいは(あわ)てて立ち上がり、(へっつい)のある土間へ小走りで向かって行った。

おもむろに、多聞は目を閉じたまま髪結いに訊いた。

< 310 / 389 >

この作品をシェア

pagetop