大江戸ロミオ&ジュリエット

「志鶴は『離縁したい』と云うてござる」

彦左衛門は盛大なため息を、はあぁっ、と吐いた。

多聞と源兵衛の顔がとたんに強張り、雷に打たれたかのように動けなくなった。

「さすれば……松波の御家(おいえ)には無礼千万の極みであるとは重々承知の上……」

彦左衛門が、少し躊躇(ためら)いがちに云い(よど)む。

「志鶴に『松波殿との子ではないのか』と訊き申したら……」

申したらっ……多聞と源兵衛とが続く言葉を求めて、ずいっ、と身を乗り出す。

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