大江戸ロミオ&ジュリエット

広い屋敷を迷いながら、ようやっと(へっつい)のある土間へとたどり着いた。

どうやら、志鶴があてがわれた部屋は、其処(そこ)とは真反対の端らしい。

行き交う奉公人たちはだれもが(せわ)しそうで、なかなか声がかけられぬ。


「……かようなところで棒立ちしておると、みなの妨げになるとは気がつかぬのか」

冷ややかな声がした。

……姑の富士(ふじ)だった。

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