イジワル御曹司様に今宵も愛でられています

「綾子さんのクラスか。それならまぁ安心かな。それにしても、俺に一言相談くらい……」

 智明さん直属のアシスタントなのに、私からなんの相談もなかったこと、さすがの智明さんも不満そうだ。


「その、私は初心者ですし、智明さんのお手を煩わせるようなことでもないかな、なんて思ったりして……」

 不機嫌さをモロに顔に出され、途端にしどろもどろになる私を智明さんがじろりと見る。


「結月、それ嘘だろ」

「げ」

「げ、じゃないでしょ。どうせ結月のことだ。俺にばれたら、無理にでも結月に教える時間作ろうとするって思ったんじゃないの」

「えーっと」

「えーっとじゃない、また遠慮したんでしょ」

「……すみません、そうです」

 しゅんとうつむく私を見て、智明さんがブッと吹き出した。


「結月は隠し事できないタイプだよね」

「そうかもしれません」

 肯定すると、智明さんはまたくつくつと笑う。

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