イジワル御曹司様に今宵も愛でられています

 智明さんの説明を聞いていると、先ほどの木村さんがメニューを持ってきてくれた。

「なんでも好きな物頼んでいいよ」

「本当ですか? わぁ!」

 メニューを開けば、色とりどりの季節の上生菓子が乗っている。

「それじゃ、これを」

 間に鶯色の羊羹を挟んだ浮島と桜を象った練り切りとお抹茶のセットにした。

「俺はコーヒー」

「かしこまりました」


 オーダーしたものが届くのを待って、智明さんが口を開いた。

「結月、本部で稽古受けてんの?」

 智明さんが、ソファーの下に置いた花袋をちらっと見る。

「はい、実は今日から」

 智明さんには内緒で、と思っていたのにこんなに早くばれちゃうなんて想定外だった。


「調べていただいたらちょうど葛城先生のお教室に空きがあって。席が埋まる前に入れていただいたんです」

 智明さんに内緒にしようとしてたこと、我ながらうまくごまかせてるんじゃない?

 智明さんも疑っている様子はない。

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