イジワル御曹司様に今宵も愛でられています

 智明さんの声をかき消して、目の前の運河から突然水が吹き上がる。

 飛沫が降り注ぎ、私と智明さんは「うわぁ!」と声を上げ慌てて後ろに下がった。

 どこからか大きな音楽が鳴り出し、今日最後の噴水ショーが始まるとアナウンスが流れる。

 呆気に取られる私たちの前で、突如ショーがはじまった。


 たくさんの水柱が、音楽に合わせて、まるで踊っているかのように動き出す。

 七色のライトに照らされて、とても綺麗だ。


 クライマックスが近くなり、水柱の高さは五階建てのショッピングモールを越えた。

 大きな水の粒がバタバタと音を立て私たちの上に降り注ぐ。

 それが妙に気持ちよくて、水を受けながら智明さんと声を上げて笑った。

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