イジワル御曹司様に今宵も愛でられています
繋いだ手もそのまま、外に出た。
よく確かめずにエレベーターに乗ったから、ホテルの外に出てしまったらしい。
ホテルに隣接するショッピングモールの前に、この施設一体に広がる人口の運河が見える。
吸い寄せられるように近づくと、水と、何か植物の青っぽい香りがした。
無言のまま、隣に立つ智明さんを見上げると、私を見下ろす、物言いたげな瞳とぶつかる。
「あの、ごめんなさい。あんなことしてしまって」
智明さんは氷見さんを怒らせないよう、なんとか角が立たずに終われるよう耐えていたのに。
頭に血が上った私が、それを台無しにした。
「いや、謝るのは俺の方。結月にあんなことまでさせて、本当にごめん」
「そんな」
智明さんに謝らせてしまった。悪いのは大人げない私の方なのに。胸がチクリと痛む。
しばらく沈黙が続いて、智明さんが口を開いた。
「結月、さっきのは――」