イジワル御曹司様に今宵も愛でられています
恵理のメッセージに返事をして、時間を確認すると、約束の時間をもう三十分以上過ぎていた。
やはり父からは着信もないしメッセージもない。
どこかで足止めされているにしても、何日も前から「結月とデートするの久しぶりだな」って言って楽しみにしていたのに、連絡もないなんておかしい。
こちらから電話をかけてみようとスマホをタップしたと同時に、画面が着信の表示に切り替わった。
「え?」
画面に表示されているのは、見覚えのない番号だ。ひょっとしたら就職先からの連絡かもしれない。慌てて電話に出た。
「はい、藤沢です」
『もしもし、結月ちゃん? 俺だよ、白井です』
「ああ、これ白井さんの番号だったんですね。いつも父がお世話になってます」
電話をくれたのは、父と同じ大学の考古学研究室に勤める白井さんだった。
白井さんは父の相棒のような存在で、公私にわたって仲が良く、家にも何度か来てくれてことがある。父と同世代の、温和な性格の人だ。