イジワル御曹司様に今宵も愛でられています

「……き、気をつけます」

 自分の身の危険を感じて身震いする私の肩ポンと叩き、松原さんは「お家元や葛城さんが守ってくれると思うし、そんなに怖がらなくても大丈夫ですよ」と言って笑う。


 優しくて格好よくて、本当に素敵な人だ。

 彼女の隣に、量販店のスーツで立っている自分が恥ずかしい……。けど、卑屈になっている場合じゃないよね。私は私の仕事をしなくては!


 中央のスペースでは、もうずいぶん長い時間、わざわざ石垣島から空輸したという大きな流木を前に羽根木さんが格闘している。

 葛城さんはオープンニングパーティーの確認のため、奥の事務所に入っている。

 羽根木さんが一息ついたのを見計らい、松原さんに「ちょっと失礼します」と断って、私は自分の判断で用意してきたタオルとお茶を手に駆け寄った。


「お疲れ様です、お家元お茶いかがですか?」

「ありがとう、藤沢。助かる」

 余程喉が渇いていたらしい。羽根木さんは笑顔で私からペットボトルを受け取ると、喉を鳴らしてお茶を飲んだ。タオルで額に浮かんだ汗を拭う。

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