イジワル御曹司様に今宵も愛でられています
静かな病室に、医療機器の電子音が規則正しく響いている。
サイドテーブルに置かれたデジタル時計は、あと三十分ほどで午後七時になろうとしていた。
ベッドに横たわる血色の悪い父の頬をそっと撫で、私は大きくため息をついた。
病院へ搬送されたあと、父は緊急手術を受け、無事一命を取りとめた。
しかし手術を執刀したお医者さまの話では、父はこのままいつ目を覚ますかもわからないし、たとえ目を覚ましたとしても、これまで同様の生活が送れるとは限らないということだった。
自覚症状もなく突然発症することもあるとはいえ、どうして私はずっと側にいながら父の異変に気が付かなかったのだろう。
お酒も煙草も食事も、私がちゃんと気をつけてあげればよかった。
もっと私がしっかりしていれば、父をこんなに苦しませずにすんだかもしれないのに。
頭の中で後悔を繰り返していると、病室のドアをノックする音が聞こえた。