イジワル御曹司様に今宵も愛でられています
「結月ちゃん」
病室の入り口に立っていたのは白井さんだった。電話をかけてくると言って、席を外していたのだ。
白井さんは大学の研究室で父を発見してから、この時間までずっと父に付き添ってくれていた。
「悪いんだけど、俺はそろそろ失礼するね」
「遅くまで付き合わせてしまってすみません。白井さん、本当にありがとうございました」
私が頭を下げると、白井さんは「いいんだよ」と優し気な笑みを浮かべた。
「お父さんの容態は大学の方にも伝えたから。明日俺が事務局に出向いて、詳細を報告してくるよ」
「何から何まですみません。よろしくお願いします……」
なんとかそう答えて、思わず私は目を伏せた。
「……結月ちゃん?」
白井さんが帰ってしまえば、とうとう病室には私と父二人きりになってしまう。
私が心細く思っていることを察したのだろう。白井さんは私を見ると、子どもの頃会うたびそうしてくれていたように、頭をポンポンと優しく撫でてくれた。