イジワル御曹司様に今宵も愛でられています

「結月、着いたよ」

 右肩を何度か揺さぶられて目が覚めた。

 考え事をしていて、いつの間にか眠っていたらしい。私の体には、智明さんのジャケットが掛けられていた。


「ちょっとは気分良くなった?」

「はい、もう本当に平気です。これ、ありがとうございました」

 掛けられていたジャケットを折りたたみ、智明さんに返した。


 何度も大丈夫だって言ったのに、私の体を気遣って起こさずにいてくれたんだろう。

 自分の気持ちに気づきはじめた今、優しくされるのはちょっとつらい。


 ちょうど夕食の時間らしく、病棟の廊下やナースステーションにはほとんど人がいなかった。見つかって騒がれたらどうしようと思っていたから、ホッと肩を撫で下ろす。


「父さん、智明さんも来てくれたよ。さ、どうぞ」

 病室のドアを開け中に招き入れると、智明さんは無言のまま父の傍らの椅子に腰掛けた。

 眠ったままの父の顔を見つめ、その手を取り優しく撫でさする。

 その背中が本当に悲し気で、私は声をかけられないまま黙って見つめていた。

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