イジワル御曹司様に今宵も愛でられています

「母とは親同士が勝手に決めた見合い結婚だったそうだよ。もちろんお互いに愛情なんてない。母の存在は父を羽根木の家に縛りつけるほど重いものじゃなかったんだろうな」

 そこまで言って、智明さんは膝の上に置いていた両手をぐっと握りしめた。


「家を出るまで、父は何もかも祖父の言いなりだった。結婚直後から早く跡継ぎを儲けるよう祖父から急かされていたみたいだから……今俺がここにいる」

「智明さん、もう」

 つらいなら、もう話してくれなくていい。そう言おうとしたのに。

「結月、俺はただ香月流を継がせるためだけに愛のない両親から生まれた子なんだよ」

 絞り出すようにそう言うと、智明さんは唇を噛み締めた。


 自分のことをそんな風に言うなんて。

 智明さんがこれまで一人で抱えてきたものを思うと、胸が張り裂けそうだった。


 でも、たとえ愛情のない、家を守るためだけの結婚だったとしても、自分の血が繋がった子を置いて出て行ってしまうなんて私にはやっぱり腑に落ちない。

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