イジワル御曹司様に今宵も愛でられています

 お父さんのことだって、大人になった今ならどんな手段を使ってでも探そうと思えば探し出せたんじゃないだろうか。

 でも智明さんがそうしなかったのは、たぶん香月流から離れたいと思ったお父さんの意志を尊重したからだ。


 お母さんのことだってそう。居場所がわかっているなら余計に、会いたいと思わないはずがない。


 相手を思うあまり、自分のことはなおざりになっている。

 それじゃあ一人残されてしまった智明さんは、どこに感情をぶつければいいの?

 智明さんは、いったい誰に救いを求めてきたんだろう?


「そんな風に言ってくれたのは、結月と圭吾さんだけだな」

「……父が?」

「うん、そうだよ」

 智明さんは寂しそうに微笑むと、片手を私の頭に乗せた。


「圭吾さんの存在が、俺の唯一の救いだった」

 昔の自分を思い出しているのだろうか、何かを愛おしむように、私の髪に触れる。

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