イジワル御曹司様に今宵も愛でられています

「物心ついても両親を求めない俺のことを、みんな冷たい子どもだと言っていた。寂しさを口にして祖父のことを悲しませたくなかったから、幼いなりに自分の中で折り合いをつけてきたのに。でもそんな俺の気持ちに唯一気づいて可愛がってくれたのが、圭吾さんだったんだ」

「父と智明さんはそんなに前から?」


 私が訊くと、うんと頷く。父と過ごした日々を思い返しているのだろう。それまで固かった智明さんの表情が少しだけ和らいだように見えた。


「親友の子どもである俺のことを気遣って、しょっちゅう遊びに来てくれた。仕事で忙しい祖父に代わって授業参観や運動会にも来てくれた。圭吾さんは父の代わりをしてくれたんだ」

 父がそんなことをしていたなんて、少しも知らなかった。


「俺が道を逸れなかったのも圭吾さんのおかげだよ。いつだって可愛がってくれたし、ダメな時はちゃんと叱ってくれた。人を思いやることも全部圭吾さんが教えてくれた」


 そう言って、智明さんは父の顔を見た。

 まるで実の父親を見るかのように親愛の情が籠った眼差しで。

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