※「触るな」って言ってるのに、彼には伝わらないようです。
電車に乗って最寄り駅まで着いたあたしは、人混みを抜けたことに安堵する。
最寄り駅から家までの街灯の少ない道を少しおぼつかない足で歩く。
…案外あたしも酔ってたんだ。
やっぱり疲れも溜まってるし、とっととシャワーだけ浴びて寝よう。
酔いのせいか若干視界がぼやけてるし、少しふわふわする。
1人になると気が抜けてお酒が回るのは少々困りもんだ。
「…紅ちゃん…?」
???
「おーい。紅ちゃん。」
…ダメだ。最悪だ。幻聴であってほし。いや、これは幻聴だ。てゆーか、
「くーれーなーちゃーん。」
こいつまじでストーカーなの?!!
咄嗟にカバンから携帯を出して110を押す。
そのまま通話ボタンを押そうとしたら、
「いやいやいや!!今日は偶然だって!!!」
「……今日"は"?」
「いやいやまじで誤解!」
…。
「本当だって!!てか、そこ!俺の会社のビル!!」
指をさした先にビルがあるのは見えるけれど、酔いのせいで目は霞んでるし、なによりそんなのどうとでも言えるじゃん。
「ふーん。そうなんだ。じゃ、さようなら。」
こいつの言ってることが嘘か本当かなんて考える思考力なんか残ってない。
もうまじで勘弁して欲しい。
あたしに気付いても無視してくれればいいのに。