独占欲強めな社長と政略結婚したら、トキメキ多めで困ってます

「そんな……っ、謝らないでください」
「奥様にはいろいろと失礼なことを言ってしまいました。そしてわざと社長に気があるような態度をとって見せつけておりました。しかし誤解なさらないでください。私は社長に対して特別な感情を抱いているわけではありません」
「……へ?」

 一体何の話だ?

 話が思わぬ方向に進みだして詩織と山口を交互に見る。

「で、でも……っ、お慕いもうしておりますって……」
「はい。上司としてお慕いしている、尊敬しているという意味です。そうでなければ社長秘書を長年務められません」
「えええっ!?」
「差し出がましいことかとは思いましたが、お二人を盛り上げるスパイスになれば、と思ってさせていただいたまでです。私にはちゃんと恋人がいますのでご心配なさらなくて大丈夫です」

 にっこりと微笑む山口に、顔面蒼白の詩織。二人にどういうやりとりがあったのか、大体想像つくが、どうやら今回は山口に一本とられたということみたいだ。

「詩織帰るぞ」
「……はい」

 急に脱力した詩織を車に乗せて、自宅へと向かうことにした。


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