独占欲強めな社長と政略結婚したら、トキメキ多めで困ってます
佐々木さんと私の夫婦生活は彼の望むことをしなければならないという約束だから、ちゃんと聞いておかなければ。
「どちらでもいいけど、君はしたことないんだよね?」
「いえ、昨日……佐々木さんにしてもらっ――」
ふと顔を上げると、佐々木さんの体が目の前に来ていて、私は押し迫られて廊下に背中をつけて行き場を失った。
「あれは、キスじゃないでしょ」
「そうなんですか……? ほっぺたに、ちゅって……」
「俺がしてほしいのは、唇」
濃すぎず、薄すぎない、すごくバランスの整った美しい顔が近づいてくる。色っぽい眼差しの瞳に見つめられて動けなくなる。
うわぁぁん! 顔が近いよーっ。
「詩織、ただいま」
低くて甘い声でそう囁かれて、そっと頬を撫でられる。大きくて男らしい指先が頬を通り過ぎると、私の顎をくいっと上げた。