目覚めたら、社長と結婚してました
「そうよー。でも結婚なんてタイミングよね。佳菜子たちがちょうど帰国する機会もあって、怜二さんが海外出張を控えていたのもあったからかしら。さっさと籍だけ入れちゃうんだもの」

 話を聞いたところで、まったく記憶が蘇る気配もなく、どこか他人事のように聞こえる。

「お父さんとお母さんは、その、結婚についてなにか言ってた?」

 作業を終えた伯母がベッドに歩み寄り、さっきまで社長が座っていた椅子に座った。

「なにか、というよりすごく喜んでたわよ。むしろ恐縮してたというか」

「恐縮?」

「そりゃ、まったく色恋沙汰のない年頃の娘がいきなりあんないい人を捕まえてくるんだもの。結果的に天宮グループとも繋がりができたわけだし」

 なるほど、と相槌を打ったところで疑問が残る。

「でも、うちに直接関係することある?」

 私の両親は今フランスでパティスリーを経営している。パティシエである父は、母と共に自宅近くで洋菓子店をずっと営んでいた。

 その腕は確かで、店はいつも多くのお客さんで賑わい、両親は忙しそうだった。テレビや雑誌などに幾度となく取り上げられ、子どもとしては寂しさもありながら店も両親も誇らしかった。

 父の腕を見込み、色々なところから声がかかったりもしたそうだが、子どもたちが独立するまでは近くで成長を見守ると決めていたらしい。

 そして私と弟が家を出たのを機に夫婦で渡仏を決意。元々、父はパティシエの技術を学ぶためにフランスに留学していた。
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