目覚めたら、社長と結婚してました
おもむろに目を開けて瞬きを繰り返す。静かに首を動かして身じろぎすると声がかかった。
「起きたか?」
低い声に頭が一気に冴える。
「えっと」
社長は昼と同じ、ベッドのそばに備え付けられている赤い椅子に腰掛けていた。お世辞にも座り心地はいいとは言えなさそうで彼に似つかわしくもない。
しかし彼は気にする素振りもなく長い足を見せつけるように組み、手には文庫本を収めている。その本を閉じて改めてこちらに視線を向けてきた。
「気分はどうだ?」
「平気です。ただ、すごく眠くて」
「薬に眠くなる成分も入ってるからな。それに混乱する記憶を整理するために脳が睡眠を欲してるんだろ」
ちらりと時計を見れば午後七時四十分。夕飯を食べてまた微睡んでいたようだ。社長はいつ来たんだろう?
私は意を決し、彼にしっかりと向き合った。
「あの、社長。私たちって本当に結婚してるんですよね?」
「なんだ? 信じられないなら戸籍謄本取ってきてやろうか?」
力強く尋ねたのに、彼の返事はあっけらかんとしたものだった。おかげで意気込んだ調子が崩れそうになる。
「結構です。そういうことではなくてですね、どうして私たちは結婚したんでしょうか?」
気を取り直して詰め寄ると、病室にしばし沈黙が降りる。口火を切ったのは彼の方だ。
「結婚したいと思ったから」
「は?」
彼は変わらないトーンでなんでもないかのように答えるので、逆に私が面食らう。
「起きたか?」
低い声に頭が一気に冴える。
「えっと」
社長は昼と同じ、ベッドのそばに備え付けられている赤い椅子に腰掛けていた。お世辞にも座り心地はいいとは言えなさそうで彼に似つかわしくもない。
しかし彼は気にする素振りもなく長い足を見せつけるように組み、手には文庫本を収めている。その本を閉じて改めてこちらに視線を向けてきた。
「気分はどうだ?」
「平気です。ただ、すごく眠くて」
「薬に眠くなる成分も入ってるからな。それに混乱する記憶を整理するために脳が睡眠を欲してるんだろ」
ちらりと時計を見れば午後七時四十分。夕飯を食べてまた微睡んでいたようだ。社長はいつ来たんだろう?
私は意を決し、彼にしっかりと向き合った。
「あの、社長。私たちって本当に結婚してるんですよね?」
「なんだ? 信じられないなら戸籍謄本取ってきてやろうか?」
力強く尋ねたのに、彼の返事はあっけらかんとしたものだった。おかげで意気込んだ調子が崩れそうになる。
「結構です。そういうことではなくてですね、どうして私たちは結婚したんでしょうか?」
気を取り直して詰め寄ると、病室にしばし沈黙が降りる。口火を切ったのは彼の方だ。
「結婚したいと思ったから」
「は?」
彼は変わらないトーンでなんでもないかのように答えるので、逆に私が面食らう。