目覚めたら、社長と結婚してました
『まあ、まだ新婚だし、ふたりの時間を楽しむのもいいわよね。遅くまでごめんなさい。あ、佳代子にもよろしく伝えておいてね』

 なにか言おうとする私をさらっと無視して母は自分の言いたいことだけを告げて、通信を切った。私は口元に手をやり、軽く息を吐く。

「子ども、か」

 結婚イコール子どもというわけでもない。ただし、怜二さんの立場を考えたら子どもの存在を無視するわけにもいかない。

 そもそも彼が周りに結婚を急かされていたのもそういう理由だ。

 でも、私たちは子どものことを考える以前に、まだそういう関係になっていない。これってやっぱりおかしいことなのかな? 結婚までしておいて……。

 怜二さんが出張から戻って来た日、いわゆる初夜。私だって経験がなくても知識くらいはある。結婚したんだから、と自分なりに覚悟を決めてベッドで彼にくっついてみた。

 けれど怜二さんはキスをして私を抱きしめると、それ以上なにもする気配はなく、かといって私からなにか行動を起こすこともできず、有耶無耶になってしまった。

 怜二さんは経験豊富だし、どう考えても原因は私にあるのは明白だ。気を使わせてしまっているのかな。それとも……

 はっきりとした答えが出せないまま、私は寝室に向かうことになった。

  怜二さん、先に寝てるかな?
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