目覚めたら、社長と結婚してました
「はぐらかしてますって!……私、真面目に聞いているのに」

 これ以上は本気で機嫌を損ねると思った俺は再び彼女に口づけた。そして唇が離れて間髪入れずに告げる。

「もうもらった」

「え」

 柚花は『まさか今のキスが!?』という顔をしている。本当にこういうときの彼女はわかりやすい。でも、それでいい。

 ふっと微笑んで俺は正直な思いを口にすることにした。

「柚花が俺のものになって、こうして手を伸ばせば届く距離にいるだろ。それで十分なんだ」

 さっきとは違う意味で彼女の顔が赤くなる。今度は狼狽付きだ。

「そ、そういう答えは、ずるいと思います」

「お前が聞いてきたんだろ」

 彼女は困ったように眉尻を下げた。

「……私、どうしたって怜二さんには敵いません」

 言いながらも柚花の顔には笑みが浮かんで、幸せそうだ。

「それは、どうだろうな」

 敵わないのはこちらの方だ。でも、そこまで口にすることなく柚花を抱きしめる。

 もう二度と彼女を諦めるような真似はしない。そばでずっと守り続けてみせる。一方的な誓いではなく彼女も望んでくれているとわかっているから、この先なにがあっても大丈夫だ。

 誰でもよかったんじゃない。俺たちはどちらもお互いだけを求めて結婚した。

 そういえば、柚花の欲しいものはなんだろうか。聞くのもいいし、驚かせるのもいい。

 腕の中にいる彼女の存在と温もり感じながら俺はなにをプレゼントするか、ひそかに考えを巡らせ笑顔になった。

Fin.
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