目覚めたら、社長と結婚してました
 さらに驚愕したのはピアスをしていたことだ。ピアス穴を開けた覚えも、開けようと計画したこともない。それなのに自分の耳たぶには、パールがきらりと光り花をモチーフにしたシンプルなピアスがはめられている。

 私、どうしちゃったんだろ。本当に私なの?

 不安にも似た気持ちがじわじわと首を締めつけるように息苦しさをもたらす。

 身長は百六十センチ弱と中学生の頃から変わっていない。顔はそこまで悪くないとは思うし、メイクもお洒落も人並みにはしている。

 どちらかといえば“おとなしそう”という印象を抱かれることが多いが、実際はわりとアクティブな方、だと自分では認識している。

 私は私だ。自分に言い聞かる。髪型やピアスについてはイメージチェンジでも計ったということにしよう、うん。

 それにしたって……。左手の薬指を再度確認する。

 私、本当に社長と結婚したの? 彼の左手の薬指にも私と同じデザインの指輪がはめられていた。指輪なんてするタイプに思えないのに……。

 そんなことをあれこれ考えて、鼓動が速くなる。

 そもそもなんで私は彼と結婚したの?

 思考を遮るように部屋のドアがノックされ、間髪入れず慌てた様子の女性が入ってきた。

「柚花、あなた階段から落ちたって、大丈夫なの!?」

「佳代子(かよこ)伯母さん」

 息急ききった伯母の名を呼ぶ。彼女は奥村佳代子。母の姉で外国を拠点においている両親の代わりに、今はなにかと私を気にかけて面倒を見てくれている。
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