Some Day ~夢に向かって~
想いが届く時
その時、講堂は大歓声に包まれた。司会を務めるゴ-さんの声に促されて、松本が壇上に姿を現すと、眩いばかりのフラッシュが取材のマスコミ陣から浴びせかけられる。テレビカメラまで入ってるんだから、やっぱりすげぇな。


見慣れた制服姿では、もちろんなく、テレビで見たことのあるGのユニフォ-ム姿でもない、ス-ツに身を包んで登場した松本。でもその姿は似合ってないというか、ぎこちないというか、悪いが笑ってしまった。


そんな松本を、岩武が待ち構えている。精一杯の笑顔を浮かべて、花束を手渡した岩武に、松本も何か岩武に言うと、笑顔で受け取った。


そして、校長を始めとした壇上に居並ぶ幹部教職員に一礼、さらに観衆に向かって一礼した松本は、用意された席についた。


代わって登場した校長が、得意の長広舌をふるいだしたらどうしようかと思っていたが、さすがにこの日の主役は自分ではない(いつもなんだけど)ことはわきまえていたらしく、彼としては画期的な短いスピ-チで席に戻る。


続いて生徒会長の歓迎スピ-チ、そしていよいよ本日の主役の登場。改めて大拍手と歓声に包まれてマイクの前に立った松本は、俺達に深々をおじぎをすると話し出した。


「みなさん、こんにちは。昨年度明協高校卒業生の松本省吾です。」


松本の声が少し震えている、やっぱり緊張してるんだな。


「今日は、このような機会を設けていただき、本当にありがとうございます。母校に久しぶりに足を踏み入れ、校長先生を始めとして、お世話になった先生方や一緒に甲子園で戦った仲間達の顔を久しぶりに見ることが出来て、正直ホッとしています。やっぱり母校はいいな、明協高校のOBでよかったな、と心から思います。」


湧き上がる大歓声に、はにかんだような笑顔を見せる松本。どうやら少しづつ落ち着いて来てるようだ。


「そして、このようにみなさんに熱烈に歓迎していただいただけでなく、こうしてお話をさせていただく機会をいただいたのは、光栄ではありますが、正直緊張もしています。つい半年前まで、みなさんと一緒にそちらの席に座っていた僕に、何かお話しできることがあるのか、随分悩みました。」


そう言うと、松本は一呼吸置くように、俺達を見渡した。
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