幼馴染みと、恋とか愛とか
首藤が俺の言葉を繰り返した。
途端に胸の奥が騒ついて、キッと奴の顔を睨んでしまう。

その視線を受けた首藤はビクッとして顔を引きつらせる。
俺はその顔を見直し、「あ、いや…」と誤魔化した。


「三橋さんが作ってくれたんだ。俺のスケジュールが忙し過ぎて、ちゃんと食事をしてないみたいだから…と言って」


本当はそんな優しい言い方ではなかったが、首藤の手前、少し色を付けてみた。


「三橋さんが?」


再び目を丸くする首藤。
直ぐに唇を噛み締め、「ズルいですよ」と言いだした。


「そういうの職権乱用じゃないですか」


怒ったような口調で呟き、じっと弁当の中身を覗き込んでくる。


「俺は別に自分から作ってくれとは言ってないぞ」


彼女が俺の身体を心配して…と返せば、首藤は鋭い眼差しで俺のことを見据えた。


「作ってくれとは言わないにしても、そうさせる様に仕向けてるじゃないですか。同じ部屋で仕事をしたり、あれほど要らないと言っていた秘書として雇ったり……」


「お前、それ僻みだろ」


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