幼馴染みと、恋とか愛とか
程よい甘さに煮えてるかぼちゃは、やっぱり何処かしらノスタルジックな味がする。


(美味い…)


何を考えようとしてたのか、一瞬忘れそうになる。

萌音が作る弁当はいつも俺の思考を停止させる。
フル回転で動いてる脳みそが、まるでスリープ状態に入ってしまうように。


(……何を考えてたんだっけ)


目線をデスクに向けると首藤が置いていったコピー用紙があり、そうそうこれだ、と思い出した。


(どうして俺はさっき、首藤にあんな意地の悪いことをしたんだろう)


あいつが萌音を気に入ってるのを知っていながら、弁当の作成者を正直に萌音だと言ってしまった。

首藤がそれを聞いてムッとするのは半ば分かってた筈なのに、どうしても教えてやりたいような気分に陥った。


(この間も同じ様な感情が働いたんだよな)


歓迎会でのことを思い出して、あの時もイラッとしたんだ…と思い返した。


(萌音は少しぼうっとしてたのに)


甘党の萌音がチーズスフレを見ても固まってるままだった。

周りの社員達からビールや食事を勧められ、断りもせずにばくばくと飲んだり食ったりしてたからだとは思うが。


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