溺愛本能 オオカミ御曹司の独占欲には抗えない

フッと笑みをこぼして突っ込めば、ようやく声が出せるようになったのか、楓はあたふたしながら「な、何で？」と聞いてくる。

「何が何でなんだ？」

質問の意味はわかっていたが、その口から言わせたくてわざと惚ける。

「何で私にキスしたの？」

俺から逃げるように車のドアにへばりつき、彼女は信じられないといった顔をする。

「飢えてたから」

そう茶化したら、楓はドンと俺の胸を叩いて抗議した。

「血に飢えた吸血鬼みたいな言い方しないでよ！飢えてたら誰にでもキスするの？」

「美味しく見えたらな。だから、本当にお前を食べないうちに、早くなんか食わせろ」

意地悪く笑って言えば、彼女は上目遣いに俺を睨んだ。

「襲うのわかってるなら、おにぎりでも携帯しなさいよ」

楓はふんと鼻を鳴らし、ドアを開けて、ひとりでスタスタとエレベーターに向かう。