溺愛本能 オオカミ御曹司の独占欲には抗えない
すぐにうちの技術者を引き連れてシュテルンに向かい、先方の社長や技術者と話をした後、俺は楓のことを切り出した。

「実は、御社で僕の婚約者が働いているんですよ」

婚約者というのは真っ赤な嘘だが、その方が親密さが伝わっていいと思った。

「ほお、それはうちと御縁があるんですね。部署はどこですか?」

俺の話にシュテルンの社長は関心を示す。

「総務部で主任をしているんです。名前は水無月楓と言います。彼女の仕事ぶりを見てみたいのですがいいですか?」

公私混同しているのは充分承知の上だ。

なりふり構ってなんかいられない。

一刻も早く楓を捕まえる必要がある。

ここまで来たらもう手ぶらでなんか帰らない。

「もちろんですよ」

俺の頼みをシュテルンの社長は快く同意し、男性秘書の案内で俺は総務部へ向かった。

ちょうど十二時を過ぎて、お昼を食べに行く多くの社員とすれ違う。

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