溺愛本能 オオカミ御曹司の独占欲には抗えない
病室がシーンとしているせいか、楓の緊張が俺に余計に伝わってくるのだ。

そんなんじゃあ、いつまで経っても良くならない。

ここに修也がいたら……そう思わずにはいられなかった。

「何も心配いらない。もうひとりで頑張らなくていい」

修也のようにゆっくりと穏やかな声で彼女に伝える。

すると、気が緩んだのか、微かにすすり泣きが聞こえてきた。

今は俺を兄と思えばいい。

「大丈夫。側にいるよ」

優しく楓の頭を撫でていたら、そのうち彼女の静かな寝息が聞こえて、ホッと胸を撫で下ろす。

入院することにはなったが、楓は今俺の手中にある。

とりあえず一安心だ。

なんせあの夜のことがあってからずっと彼女のことを考えていて、仕事をしていても全然集中出来なかった。

こんなの俺らしくない。
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