わたしと専務のナイショの話
 のぞみ、と感激したように、のぞみを抱き締めようとした京平だったが、

「……待てよ」
と動きを止める。

「そこも嘘なのか?」

 いや……どうでしょうね、とのぞみは苦笑いした。

 恥ずかしいので、嘘だということにしておいて欲しいんですが、と思うのぞみを京平は抱き寄せた。

「まあ、そうだな。
 お前に嘘つけとか無理だよな。

 昔から、嘘は下手だもんな。

 なんせ、遅刻した言い訳が目にミドリの虫が入りましただもんな」

「……いや、それは、ほんとに入ったんですからね。

 登校中に目の中で虫がつぶれてみてくださいよっ。
 絶対、遅刻しますからっ」

「今の話の中で、そこで一番熱くなるのはおかしくないか……?」

「だって、先生、あのとき、
『わかった、わかった』
 って言ってたのに、全然わかってなかったってことですよね?」
と怒るのぞみを、今もまた、わかった、わかった、と言いながら、京平は膝に抱きかかえる。
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