わたしと専務のナイショの話
 



「なんで猫に轢かれた女なんだ」

 次の日、秘書室で仕事をしていたら、祐人にそんなことを訊かれた。

 のぞみは整理していたファイルから顔を上げ、
「……誰に聞いたんですか」
と言う。

 いや、誰ってひとりしか居ないんだが。

「専務が今朝言っていた。
 お前、メモの漢字間違えてたろ?

 それを見ながら、『猫にひかれた女めっ』ってお前のことを罵ってたんだ」

 ……専務。
 本当に私のことお好きですか?
と思いながら、のぞみは祐人に説明する。

「中学校は遠かったので、自転車通学だったんですよねー。

 まあ、坂道漕いで上がれないので、ほとんど押してたんですけど。

 でも、帰りは下りだったので、私が軽快に自転車で下りていたらですね。

 いきなり目の前を猫がふらっと横切ったんですよ。

 避けようとして、しっぽかなにかに乗り上げたんですが、私が猫に負けて、吹っ飛んだんです。
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