わたしと専務のナイショの話
 



「ちょっと」
と廊下で万美子に声をかけられたのぞみは、思わず、後ろを振り向いた。

「いや、後ろに誰も居ないわよ……。
 廊下の遥か彼方に監査役が居るだけよ。

 あんたに言ってんのよ、あんたに」
と万美子に言われる。

 ごまかせなかったか、と苦笑いしながら、のぞみは万美子を見た。

「ちょっと、あんた。
 専務はどうなったのよ。

 なに、祐人に色目使ってんのよ。

 あんた、何処をどうやってもそうは見えないんだけど、実は魔性の女とか?」

 それ、実は一度言われてみたかったセリフなんですが。

 前にいろいろと注釈つきすぎて、なんだか嬉しくないんですが、とのぞみは思ってた。

「いや、御堂さんはなにも関係ないです。
 関係ないから、平気で、腕とかつかめるだけです」
と言うと、万美子はいきなり、溜息をつく。

「だってさー。
 なんか、あんたを見る祐人の目がさー。

 ちょっと、いとおしげに見えたりしてさー」
と彼女は、そんな不安な胸の内を打ち明けてくるが――。
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