わたしと専務のナイショの話
「旅行に行こう」
仕事終わりに京平が、のぞみにそう言うと、
「何故ですか」
という言葉が返ってきた。
いやお前、何故ですかとか、おかしいだろう、と思いながら、
「同じ釜の飯を食べると、人は一気に親しくなると言うだろうが」
と言うと、案の定、
「いや……社食でも、レストランでも、うちでも、たぶん、同じ釜から食べてますからね」
とのぞみは言ってくる。
俺の想定より、ひとつ多いな、と思いながら、
「社食の一升炊きの電気釜は三つもあるぞ。
俺とお前のA定食が、同じ釜からよそわれたかどうかなんてわからないだろうが」
と言うと、
「そういう意味じゃないんじゃないですかね……? 同じ釜の飯って」
とのぞみは言ってきた。
「お前に教えさとされるとか。
俺も落ちぶれたものだな……」