わたしと専務のナイショの話
 



「結婚することになりました」
「結婚?」

「来週」
「来週?」

 万美子がらしくもなく、オウム返しに訊き返してくる。

 万美子と二人、会社近くの公園で、移動販売のサンドイッチを食べていたときに、のぞみが昨日決まったばかりの話をしたからだ。

「専務がうちのお父さんの機嫌を取りたくて、来週」

「いや、それ、どっちかと言えば、怒りを買うんじゃないの?」

「いえ、なんだかお父さんは感激していました」

 昨日、のぞみを送ったあとで、いそいそと酒の用意をしてきた信雄に付き合い、京平はまた呑んでいた。

 そして、言い出したのだ。

『結婚前に娘さんに手を出したくないんですが。
 お宅の娘さんは可愛過ぎるので、私はこれ以上待つ自信がありません。

 来週にでも結婚させてください』

 そんなに娘を大事にしてくれるとは、というのと、そこまであけすけにしゃべるほど、自分に気を許してくれているのか、と信雄は感激したらしく、あっさり結婚をオーケーしてしまったのだ。

 いや、私はまだしてないんだが……。
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