わたしと専務のナイショの話
「どうして、専務のために、そこまでしてくださったんですか?」

 敵ではなかったのか、と思いながら言うと、常務は溜息をつき、

「まあ、なんだかんだで、専務はいずれ、槙の跡取りになられるお方。
 系列の何処かの会社に入るんだろうとは思ってました。

 うちに白羽の矢が立った以上、仕方がないし。

 槙家の嫡男なら、そこそこ優秀だろうと思って。

 じゃあ、使えるように教育した方がいいかと思ったまでですよ」
とあくまでも上から目線で言ってくる。

「そこそこか……」
と京平は呟いていたが。

 いやいや、ありがたい話ではないか、とのぞみは思う。

 伽耶子と話し出した田中常務を見ながら、のぞみは呟いた。

「……ガタガタだったって言ったじゃないですか、面接。

 あのとき、助け船出してくれたの、そういえば、田中常務でした」

 見知らぬおじさんがいっぱい、としか、緊張していた頭では認識できていなかったが。

「……そうか」
と京平は呟く。

 ちょっと笑ったようにも見えた。
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