わたしと専務のナイショの話
 もし、田中常務が強く押してくれていなかったら。

 こうして、専務と此処に立ってはいなかっただろう――。

 常務が言うように、これが縁というものなのだろうな、とのぞみは思った。

 そのとき、

「やあやあ、京平。
 可愛い嫁さんじゃないかー」

 京平とそっくりなのに、何処となくチャラい年配の男が来た。

 京平の父だ。

「久しぶりだな、京平。
 おめでとう。

 のぞみさんも忙しくて会えなくてすまなかったね。

 初めまして、おめでとう」
と手を握ってくる。

 いえいえ、急に決まりましたので、すみません、とのぞみが苦笑いしていると、京平の父は京平を振り向き言ってきた。

「ところで、京平。

 どうだ。
 結婚を機に、そろそろ社長とかやってみないか?

 いい会社があるんだよ」

 まるで、今日はいいネタ入ってますぜ、旦那、と笑う寿司屋のように軽い口調だった。
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