世界で一番優しい嘘〜短編集〜

贖罪の名


「あたしは・・・死んだ方がいいのか・・・?」

もう誰も信じられない。

確かにあたしの父は悪い事をした。

いや、人殺しをした。

だがそれはあたしがしたわけじゃない。

それなのに、なぜなぜーーー?

こんな目にあたしが?

そんなことばかり考えていた。

あたしは汚い人間だった。

「・・・人の価値観はそれぞれだから

他人に人の価値を決めつけられる筋合いも無いよ

けど、ミドリから見たら、疎ましい存在には代わりない

君は『あの人』の、娘だから」

慰めてるのか、貶してるのか、わからない。

一応、優しくはしてくれているのだろうか。

「・・・なぁ玲斗

お前から見たらあたしは汚いか?

お前の綺麗な目からみてもあたしはーーー」

「・・・綺麗だよ」

玲斗は優しく微笑んでいた。

「なぁ、玲斗

あたしは人殺しの娘になりたかったわけじゃない」

「・・・うん」

「ミドリを悲しませたかったわけじゃない

泣かしたかったわけじゃないんだ」

「・・・そうだね」

あたしは・・・、

そう声に出していると、自然と涙が溢れた。

「ただ、あたしだつて・・・」

あたしは、あたしだって・・・、
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