彼の隣で乾杯を
ノンアルコールカクテルをもらって壁際で休憩しながらぼんやりと招待客の顔ぶれを見ていると、
「佐本サン」と能天気な声がした。
あ、
「神田常務。お疲れ様です」
大幅に遅刻してきたタヌキがにこにこしながら隣に立っていた。
しかし、この能天気な笑顔に騙されてはいけない。このタヌキ、中身はイタチか狐かはたまた妖怪か。
ふんわりしたキグルミ体型にどこで買ったのかダークグリーンのスーツはどこぞで見たような見てないようなアニメキャラのタヌキみたいに見えてつい警戒心を解かれそうになる。
「副社長と早希さんは大丈夫そう?」ニコニコと大福みたいな笑顔で聞いてくるけど、この人の方が大丈夫なんだろうか。早希相当怒ってたぞ。
「はい。早希と副社長の挨拶回りのことを尋ねてるのであれば大丈夫ですが、約束した時間にお見えにならなかった常務に対して早希がどう思ったか…ってことに関してであれば、全く大丈夫じゃありませんよ」
「ええー。早希さんなんて?」
「明日から1週間毎日ポチを常務の見張りにつけて午前はがっつり外回りに出てもらい、午後は会議、夕方からは書類整理ーーだそうですよ」
「え!ポチの見張り付き?ひどいなぁ。どうやって逃げようかな~」
ポチというのは秘書室の男の子で早希の言う事は絶対服従、何でも聞くため周りから”ポチ”と呼ばれ、本人も納得しているドM男子だ。
神田常務は薄い頭を撫でながら困った顔をするけれど、それ余計に信楽焼のタヌキそっくりの表情になるからやめて欲しい。笑いを堪えるのが大変だから。
いや、マジで。
「あら神田さん。今夜は来ないのかと思ったわ」
透き通るような声に振り向くと、今度は漆黒のロングヘアーに切れ長の目が美しいセレブオーラをバンバン放つ大人の女性が立っていた。
「佐本サン」と能天気な声がした。
あ、
「神田常務。お疲れ様です」
大幅に遅刻してきたタヌキがにこにこしながら隣に立っていた。
しかし、この能天気な笑顔に騙されてはいけない。このタヌキ、中身はイタチか狐かはたまた妖怪か。
ふんわりしたキグルミ体型にどこで買ったのかダークグリーンのスーツはどこぞで見たような見てないようなアニメキャラのタヌキみたいに見えてつい警戒心を解かれそうになる。
「副社長と早希さんは大丈夫そう?」ニコニコと大福みたいな笑顔で聞いてくるけど、この人の方が大丈夫なんだろうか。早希相当怒ってたぞ。
「はい。早希と副社長の挨拶回りのことを尋ねてるのであれば大丈夫ですが、約束した時間にお見えにならなかった常務に対して早希がどう思ったか…ってことに関してであれば、全く大丈夫じゃありませんよ」
「ええー。早希さんなんて?」
「明日から1週間毎日ポチを常務の見張りにつけて午前はがっつり外回りに出てもらい、午後は会議、夕方からは書類整理ーーだそうですよ」
「え!ポチの見張り付き?ひどいなぁ。どうやって逃げようかな~」
ポチというのは秘書室の男の子で早希の言う事は絶対服従、何でも聞くため周りから”ポチ”と呼ばれ、本人も納得しているドM男子だ。
神田常務は薄い頭を撫でながら困った顔をするけれど、それ余計に信楽焼のタヌキそっくりの表情になるからやめて欲しい。笑いを堪えるのが大変だから。
いや、マジで。
「あら神田さん。今夜は来ないのかと思ったわ」
透き通るような声に振り向くと、今度は漆黒のロングヘアーに切れ長の目が美しいセレブオーラをバンバン放つ大人の女性が立っていた。