彼の隣で乾杯を
「いいえ、私たちが心配する必要はないと思いますよ?ね、佐本さん」

それまで黙っていたタヌキがのんびりと口を挟んだ。

さっきまで玄米コーヒーを睨んでいたタヌキが今は私を笑顔で見つめている。

ぷくっとしたしもぶくれのほっぺが福々しいタヌキの訳知り顔に「それって佐本さん、どういう事?」と部長が詰め寄ってくる。

いや、それ知りたいの私の方ですからっ。
「常務、どういう事でしょうか?」

タヌキはまあまあ抑えてと両手を下に小さく振った。

「多分今日のうちに片が付きますよ、この話」

タヌキは笑顔を崩さない。

「常務、私にわかるように説明してくださいよ。じゃないと、この先のキネックス社との取引の仕方を考えないといけないんですから」
部長がイライラとして拳を握っている。

そうだよね、あちらは私を担当者にしろなんて言うほどだし。

「そうだねぇ。キネックスにも困ったもんだよね。今までは仕事に支障が出てくることはなかったけど、いい加減見過ごせないね」

「そうです。うちの女子社員を食い物にされるわけにはいきません」

頭から湯気を出している部長にうんうんとタヌキは頷く。

「とりあえず、1、2日待ってみて下さい。もしも何か困ることがあればきちんと動きますから。佐本さんの配置も変える必要はありません。もちろん、キネックス担当も今まで通りの男性社員のままで」
< 175 / 230 >

この作品をシェア

pagetop