その瞳は、嘘をつけない。
どうしても考えてしまうんだ。

誰のために料理を覚えた?
誰との結婚資金を貯めていた?
誰との子供を夢見ていた?
今のお前を創ったのは誰なんだ、と。

嫌でもあいつの顔がチラつく。

一度だけ、本屋で見かけたあの男。
もの静かそうで、いかにも家庭的な雰囲気を纏っておきながら、
7年以上も一緒に過ごした実加をあっさり捨てた、あの男。

今の実加があるのは、あの男の影響がかなり大きい。
嫌でもそれを意識してしまう。
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