その瞳は、嘘をつけない。
「西くん、今日は何読んでるの?」

話かけるきっかけは、いつも本。
それしか共通の話題を見つけられなかった。

「あ、今読んでるのは、これ。」
そう言って、ブックカバーを外して表紙を見せてくれる。

お互いに読書が好きと言っても好みは違うようで、
ベストセラーや受賞作、映画やドラマの原作を中心に読む私とは違い、耕平はミステリーなんかのシリーズ物を読んでいることが多く、表紙を見せてもらっても
「へぇ〜。面白い?」
なんて言って、その後続く沈黙。

話題を広げることが苦手なことは、今も変わらない。

そしてそれは耕平も同じで。
一日一回、二言三言で終わる会話が
その時の私たちの、精一杯だった。
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