もう一度、愛してくれないか

「あたし、ショックで思わず泣き出しちゃったのよ。そしたら、凌牙さんも娘さんも、一緒に泣いてくれたの。それから『専務にお灸をすえるためにも、今夜は泊まっていけばいい』って言ってくれて」

紗香がぐすっ、と鼻をすする。

「そしたら、もう凌牙さんたちの離婚話なんて、どうでもよくなっちゃって、家族で一致団結して、あたしを慰めてくれたのよ。
大阪の人って、親身になってくれて、ほんとやさしくていい人たちね……」

……な、なんだ、そりゃあ⁉︎

あいつら、なーんにも知らねえくせに、思いっきり首を突っ込んできて、ただひっ掻き回しただけじゃねえかっ!

東京の下町だって、そりゃ「人情」でお節介もすっけどよ。ちゃんと「()き際」ってもんを(わきま)えてるぜ。

もし、今、あの一家にとって不幸な事件が起きたならば。

……犯人は間違いなく、このおれだ。

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