もう一度、愛してくれないか
『えっ……えええええぇーーーっ!?』
と、負けず劣らずの大音声が返ってきた。
「……るっせえっ!伊東!? てめえ、おれの鼓膜をぶち破る気かよっ!?」
耳がキーンとする。
『す…すいませんっ、専務っ!』
たぶん、向こうも同じだと思うが。
「おまえ、画面をちゃんと見なかったのかよ?
どう見ても、あれは紗香と同一人物だろうが」
少しトーンを落とすが、その代わり凄みを出す。
『いやっ…まさか、東京にいてはる奥さまだとは思いもよらへんくて……画像ではどう見ても三十代後半にしか見えへんし……実際に奥さまを見たときには似てるなぁーとは思ったんすけど、専務の好みのタイプってブレへんねんなー、ってくらいにしか……』
ははは…と引き攣った笑いが聞こえてくる。
「……そうか。『実物』は三十代後半には見えなかった、というわけだな?」
意地悪く、訊いてみる。
『いやいやいや、そういうことやなくて、じゅうぶん三十代後半っす!それから、めっちゃ綺麗なだけでなく、性格もかわいい人っす!!
お世辞じゃなくて、マジっすよっ。うちの家族がみんなそう言うてますっ』
ふん、当たり前だ。このおれが、身も心も惚れ抜いたオンナだからな。
『せやけど、あの写真、いつ撮られたんっすか?奥さんが来はったん、先週ですやろ?』
「この前の日曜日だ。月曜日にあいつらから見せられてた写真は、その前の日に撮られたものさ」
『ひいいぃっ!? はっ、速っ!? こっ、怖っ!?』
伊東の顔はムンクになっているに違いない。
おまえも厄介な写真を撮られないように、気をつけろよ。