向日葵
持ち上げられたのはひどく力のない瞳で、そこには彼の、隠しきれなかった弱さの色が映し出されている気がして。


吐き出されたため息が沈黙に溶け、彼はまるで、そんな自分を笑うかのように、フッと小さく口元だけを緩めた。



「俺には、二度もお前の縋る手を振り払うことは出来ないから。」


ポンポンと、まるで子供にするようにクロは、あたしの頭の上に手の平を乗せ、そしてゆっくりと体を離した。


離して、そして煙草を咥える様に、“ねぇ”と、あたしは言葉を紡いだのだ。



「クロってさぁ。」


「ん?」


「回りくどい、って言われない?」


「あぁ、言われるかもね。」


「あたしのことが好きなら好きって、素直にそう言いなよ。」


「やだよ、お前が言え。」


何だそれ、と。


ため息を混じらせながらあたしは、先ほどまで腰を降ろしていた石垣へと再び座り、同じように煙草を咥えた。


クロも何故か隣へと腰を降ろしてしまい、二人、真っ黒い色した海を、ただ眺め続けて。



「そういや、温かくなったらまた海に行こう、って感じの約束してなかったっけ?」


「約束じゃなくて、アンタが勝手に言ってただけじゃない?」


「へぇ、冷たいね。」


白灰色は闇に溶け、潮の香りのする風に、髪の毛をかき上げた時、フッと口元を緩めた彼の視線とぶつかった。


ぶつかって、そして片膝を立てた状態だったクロはそれを崩し、肩を引かれた拍子に唇が重なって。


何が起こったのかわからず、ポカンとしたままに目を見開いていると、“間抜け顔”と、そんなあたしを彼は笑う。


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