向日葵
ぼんやりとした視界に、彼の少し切なげな瞳が映る。


言葉の意味を噛み砕くことも出来ず、ただ戸惑うようにして視線を泳がせれば、二人の間に海風が吹き抜けた。


どこか逃げ道を作るような言い方で、思えばいつも、彼はそうやってはぐらかしてばっかりで。



「アンタだって、十分身勝手じゃん。」


刹那、腕を引かれる格好で、抱き締められて。


波音よりも大きく響く心臓の鼓動は、あたしのものか、クロのものか。


風の冷たさの所為なのか、そのぬくもりが、ひどくあたたかみを帯びて感じられて。



「あついね。
もしかして、熱でもあるの?」


「…えっ…」


「多分、50度くらい?」


「…そんなにあったら死んでんじゃん。」


「だってお前、死んだ目してんじゃん。」


「―――ッ!」


恐る恐る顔を上げてみれば、パサッとその前髪があたしの首元へと落ち、少しばかりくすぐられた。


その意味さえもわからぬまま、力が抜けるようにクロの体へと身を預けると、フッと彼は、静かに口元を緩めて。



「人生に期待してないみたいなことばっか言ってるくせに、ちっちゃいことで傷ついて。
ホントは状況を変えたいくせに、自分じゃ何にもせずにただ待ってるだけ。
そういうの全部、ムカつくんだよ。」


「…何、を…」


「お前、昔の俺みたいだから。」


キュッと、腰に回された手に小さく力が込められ、息苦しさの中で、僅かに体が震えてしまう。


“クロ”とあたしは、ただその名前を呼ぶことしか出来なくて。



「なぁ、夏希。
お前のこと放っとけない場合、俺はどうすれば良い?」


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