向日葵

脆く崩れ

あれから三日が過ぎ、あたしの風邪は何とか完治してくれた。


もうすぐ六月も近付き、気が早い空の色はどんよりと、まるで泣き出すことを堪えているようなのだから、嫌になる。


“サチさん”のことが話題に上ることはあれ以来なく、幾分心の隅に影を落としたままの結果となっているのだが。



「仕事行きたくねぇ。」


「また言ってるし。」


「だって、社長来るんだもん。」


だもん、って。


確か、クロとは昔からの知り合いで、危ない人なのだと智也が言っていたっけ。


ひどく不機嫌な空の色にピッタリとでも言いたくなるような不貞腐れた顔は、この三日のうちで、すでに朝の定番となりつつある。



「…何でそこまでして辞めたいの?」


「こき使われるし、社長が怖いから。」


いや、仕事ってそういうものなんじゃないの、と。


だけどもあんまり働いたこともないあたしが言える台詞でもなく、喉元まで出掛かった言葉を寸前で止め、“何それ”なんて呆れた顔を返すのみ。



「あの人、他にも色々手広く事業してるから、うちに顔出すことって少ないんだけど。
俺が辞めたいとか言ってるの聞いて、めちゃくちゃ怒ってるみたいだしね。」


「期待されてる証拠じゃない?」


「違うよ。
どっちかって言うと、俺のこと嫌ってるし。」


肩をすくめ、疎ましげな顔でクロは、窓の外へと視線を投げた。



『龍司さん、あの人の言うことには絶対に逆らわないんだよ。』


確か智也は、そんなことも言っていたっけ。


そんなクロが、“社長サン”に逆らってまで辞めたい本当の理由は、一体何だと言うのか。


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