向日葵
こんな言葉を求めていたはずなのに、なのにいざ言われてしまえば、心の真ん中が痛くて堪らなかった。


手を伸ばし、嘘だよって言えば、まだ間に合うかもしれないのに。



「お前、俺に言ったじゃん。
もうやめたいって、そう言ったよな?」


「だからやめるんだよ、アンタのことを。」


「―――ッ!」


「あんなのただのキスマークだし、それが何だって言うの?」


首元にあった赤みは消え、今は跡形もなくなった。


結局、そんなもので過去なんて消えることはなかったし、何をしようとも、あたしが汚い女なことに変わりはないのだから。



「良いじゃん。
アンタはこれで、心置きなくサチさんと子供のところに行けるじゃん。」


「―――ッ!」


何でそれを、と。


まるで、顔に書いているようだと思うと、唇を噛み締めることしか出来なくて。


嘘なのかもしれない、なんて淡い期待さえも、簡単に打ち砕かれてしまうのだから、嫌になる。



「勘違いしないでよね。
別に、アンタのためとかそんなんじゃないし。
誰とヤっても一緒だし、気持ち悪いだけなら、お金くれる人の方がマシじゃん。」


震える声色が伝わらないようにと、止めることもなく言葉ばかりを並べ立てた。


傷つけたくなんてないし、これ以上言いたくなんてないはずなのに、なのにあたしは、無意識のうちに自分自身を守ろうとしてしまう。


最低なのは、一体どちらなのか。



「…過去と、向き合いたいんでしょ?」


そこに、あたしは居るべきではないんだ。


そんなクロとなんて一緒に居たくないし、あたしは向き合う程の勇気もなかったのだから。


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