向日葵
「…別に、何も…」


「何もねぇわけねぇだろ?!
じゃあこの金は何なんだよ?!」


こんな風にクロに声を荒げて責め立てられるのは、これで二度目だっただろうかと、どこか冷静な頭でそんなことを考えてしまう。



「ヨシくん来たんだろ?!
何でお前泣いてたんだよ?!」


体を揺すられているのに、涙の一粒も零れない自分が居た。


だってあたしは、これ以上面倒なだけの女になんて成り下がりたくはないから。



「お前、アイツに何されたんだよ?!」


「…お金、くれたから…」


「え?」


「お金、くれたから。
だから、ヤることヤっただけじゃない?」


上手く、強がれているだろうか。


嘘だって、クロにバレないだろうか、と。


ひどく驚いた瞳は次第に歪み始め、彼は拳を握り締めて。



「…何、言ってんの?」


「言葉のままじゃない?」


「ヨシくんとヤった、って?」


そんな顔を、直視することは出来なかった。


付き合ってさえいないあたし達に別れ話なんてものは存在せず、離れる方法はもう、こんな嘘しか残されてはいないのだから。


だから、何も知られちゃいけないんだ。



「…俺、お前のこと無理だ…」


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